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Litespeed Obed FS (2004/9-2009/3)


●プロローグ

 自転車に乗り始めてからというもの、たまにニフティの自転車フォーラムの方々と遊んでもらっています。そのニフティの2003年某日の定期ミーティングで、自他共に自転車マニア度の高さを認めている(はずの)S氏が新しいMTBを披露しました。トレックのカーボンモノコックMTB、Y33をベースに高級パーツをてんこ盛りにした超軽量フルサスMTBです。で、その時はY33を肴にいろいろとMTB談義に花を咲かせたわけですが、結論としてS氏と合意を得たのが「軽ければMTBはフルサスがいい」という点でした。
 また私は個人的な趣味の問題でアメリカンブランドがあまり好きではありません。それは前々から公言していたことでした。しかしごく稀に例外はあり、その定期ミーティングの時も「トレックYバイクのOCLVカーボンモノコックフレーム、それにAMPのリンク式フロントフォークとそれを使ったMTBには並々ならぬ興味があるんだよねぇ。トレックはSさんにやられちゃったから、俺はAMPでも探そうかな」などというヨタ話も交わされていました。まあ、Sさんがそんなことを覚えているかどうかは別として、ようするにかなり以前から私はAMPのMTBには憧れがあったわけです。

●逃がした魚

 それから時が経ち2004年も半ばを過ぎたある日、ネットオークションで非常に興味深いものを見つけました。AMPのMTBフレームが売りに出ていたのです。出品されていたのは初期型のB3で、アルミ無塗装のフレームに憧れのF3 XCフォークつき。おまけに同じくAMPのメカニカルディスクブレーキと、専用フロントハブを使って組んだホイールまでついた状態で、サスペンションまわりはオーバーホールまで済ませてあるとのこと。写真で見る限り程度も良さそうです。価格は早い段階で3万円台まで達していたものの、その後の動きがないところを見ると、数人は息を潜めて狙っているのでしょう。
AMPのリンク式フロントフォークF3-XC。これは軽量版のカーボンレッグなので重量はわずか813g。ブレーキは960系XTRのVブレーキを装着する
 もちろんB3は古いフレームですが、他に代わるべきものがないユニークな設計のMTBであること、内容的、程度的に非常に魅力的であることを考えると、勝負に出る価値は充分にあり。そもそもAMP・B3は一昔前の超軽量フルサスMTBだから、MTBは里山シングルトラック遊びメインで使おうとしている私にとっては理想的です。しかも担ぎに優しいフレーム形状というのも嬉しいところ。重く担ぎにくいGTのXCR3000で辛い思いをした記憶が新しいだけに、とりあえず10万円以内で落とせれば万々歳、というつもりで参戦を決意しました。
 落とす意を決っしてしまえば、あとはやることは決まっています。数日前からオークションの動きをチェックし続け、締切当日はパソコンの前で待ち構える必勝体制。オークションでここまで気合いが入ったのは久々なので結構燃えます。またこの時点で、すでにパーツアセンブルの構想も練り上げました。手持ちの8速XTを中心に、不足パーツをXTRで補えばそこそこ軽く仕上がるはず。小物の入手法に至るまで、頭の中でプランが組み上がっていくのは楽しいものでした。
 ところが、ところがです、直前までの仕事の忙しさに加え、オークション必勝態勢を整えたことで気が緩んだのか、締め切りまであと僅かというところで、まさかの居眠り!! はっと気がついたのは、無情にも締切りの数分後。慌ててリロードした画面に映し出されたのは、恋い焦がれたフレームが他人の手に渡った記録でした。しかも落札価格はわずか5万円…。しばらくはまさに茫然自失の状態が続きました。

●収まらぬ想い

 完全にAMPバイクを手にしたつもりでいただけに、どうにも気持ちの整理がつかず、逃してしまった事実を突きつけられてもなお諦めきれない心境。この時ハッキリと聞いたのは、どこかで理性の糸が切れた音でした。しかも幸か不幸か、この時期は中途半端に預金残高が。「えーい、金に糸目はつけんから何が何でもAMPを1台組むぞっ!」という気になるまで、そう長い時間はかかりませんでした。
 とはいっても、すでに生産中止になっているAMPを探すのは簡単ではありません。インターネットの検索エンジンを駆使しまくっても、売り物件はなかなか見つかりませんでした。OEM版ともいえるメルセデスベンツMTBは何件か見つかるものの、コイツはちょっとコンセプトが…。しかもパーツのグレードが中途半端なくせに値段が高い。今一歩食指が動きません。
 一ヶ所だけAMPフレームを在庫しているらしきショップがありましたが、B3ではなくB4で白塗装のフレームのみ。価格は約10万円でフォークは入手不可とのことです。フォークをどこかで見つければこれでも、と思いはするのですが、B3のシンプルさに魅力を感じているだけに、B4だと若干心にブレーキがかかってしまいます。自転車のフレームはやはり真っ直ぐなシートチューブがBBまで達していて欲しい。つまるところ、あのB3を逃したのが本当に悔やまれました。

●天の配済?

 そんなB3に対する想いを断ち切れない状態で、ネットオークションのチェックを続けていたところ、ある日、B3のフォルムに酷似したフレームのサムネイル写真が視界の片隅を過りました。普段なら見落としてしまうところなのでしょうが、状況が状況だけに意識が敏感に反応します。しかしその日は「AMP」のキーワード検索に何も引っからなかったはず。なんだこれは…と早速そのページに飛んでみると、なんと出品されていたのはAMPバックを搭載したライトスピードのフレームでした。
シンプルなリアサスはトップチューブ下のわずかな空間を占拠するだけ。担ぎの邪魔になりにくい構造といえる。サドルはビアンキ・ボロンから使い回しているフライト・パンターニ
 ライトスピード・オベドFSという名前のそのフレームは、純血AMPバイクではないのですが、基本形式はB3と同じフレームワーク。前三角はライトスピードのお家芸ともいえるチタン(3AL2.5V)で組まれ、それにアルミ製のAMPバックが組み合わされています。しかも古いとはいえ新品。混血ではあっても双方が優れた血統。フロントフォークさえ何とかなればこれもいいゾ、と思わせるものでした。
 しかもここからが運命的ともいえる天の配済。なんとその直後にはカーボンレッグのAMP・F3フォークの未使用品までが別口で出品されたのです。両方落札しようとすればかなりの金額になることは必至ですが、ここまで来たら突き進むしかありません。
 結局、今度こそはと鬼のような気合いを込めて入札。フレームは約9万円、フォークは約6万円で落札することができました。しかしこの時点で逃した魚の3倍の金額を投じているうえ、ブレーキもホイールもつかないのですから先が思いやられます。
 数日後、手元に届いたフレームとフォークは、長年恋い焦がれていたものだけに、まさに惚れ惚れするような代物でした。AMPバックにAMPのカーボンレッグフォーク、前三角はライトスピードのチタンで、まがりなりにも新品です。ちなみに重量はフレームが2080g、フォークに至ってはわずか813g。ここまで良いモノが手に入ってしまうと、パーツだって下手なものじゃ組めません。完全にドツボです。

●毒を食らわば皿まで

 結局、その後もネットオークションやあちこちのショップでパーツ漁りをすることになりました。機能、重量を考えると、基本的には可能な範囲でXTRを奢る方針は動かしようがないでしょう。ただ現行960系のローノーマルのリア変速とデュアルコントロールレバーはできれば避けたい。極力950系の旧XTRで揃えたいところです。
 しかしこの時期に入手できる950系XTRはすでにかなり限られていて、最終的に死守できたのはリアディレイラーとシフターとブレーキレバーのみ。とりあえずこれだけあれば、トップノーマルのラピッドファイアー変速は可能になります。一方、クランク、フロントディレイラー、Vブレーキ、カセットスプロケットは960系にせざるを得ませんでした。目立つクランクまわりは950系にしたかったんですけどね…。
 シートポストはトレックY33から外したというチタン製(多分)ピラーをこれもネットオークションで入手。サドル高調整を頻繁に行なう里山遊びで使うつもりだけに、カーボンピラーは避けたいがゆえの選択でした。またハンドルバーはイーストンのEC70カーボンバー、バーエンドバーはポストモダン、ステムはリッチーWCSを購入し、ボルト締めだったシートクランプはインターロックのちょっとカッコいいクイック式に交換しました。
ヘッドパーツはクリスキングのチタン。アルミ製のもので似合う色のものが安売りされてなかったためこれを装着したが、さすがにヘッドパーツに約3万円は少々後悔
 あとヘッドパーツはクリスキングを装着したのですが、ディスカウントされて売られていたものの中になかなかチタンフレームに似合う色のものがありません。そのため仕方なくチタン製を選ぶことになってしまいました。たださすがにこれはちょっとやり過ぎだったかと反省しています。
 コスト高騰に対するささやかな抵抗としては、サドル、ペダル、メーター、タイヤ、チューブを手持ちのもので間に合わせ、ホイールはボントレガーのディスクブレーキ非対応セレクトが1万8000円で売られていたのを購入。タイヤ/ホイールはあまりケチるべきではないところなのでしょうが、後で入れ替えるのが簡単ということで今回は目をつぶりました。
 組み上がったら早速計量です。家には最小計測単位100gの体組成計があるので、自転車を抱えて計量した値から自転車を持たずに計量した値を減算する方法で算出。結果はメーターやライトやサドルバッグをつけない状態のペダル込み重量が10.8kgでした。フルサスとはいってもストロークの短いいわゆる「ちょいサス」。このくらいの軽さでは威張れたものではないのかもしれませんが、何にせよ担ぎのあるコースでも極端に苦労しないで済みそうな重量には収まったのは狙いどおりといえます。タイヤが今となっては決して軽くない(1145g)WTBのナノラプターで、ホイールも2kg弱、サドルもフライト・パンターニ(254g)ですから、このへんを今風の軽量なものにすれば、夢の9kg台も見えてきそうです。

●乗っても軽い!!

 で、自転車の本質である走りですが、さすが10kg台のMTB。とにかく軽いです。試走は近所の舗装路を走っただけですし、センターのブロックが連続パターンになっているタイヤによるところも大きいのでしょうが、それにしてもXCR3000とは異次元ともいえる走りの軽さです。あと、当然なのかもしれませんが、XTRは駆動系の剛性感は高いし、シフトの滑らかさもエクセレント。このへんはさすがですね。
 興味深かったサスペンションですが、フロントはハッキリ言ってストローク感が希薄です。かなりの入力がかからないと動き始めない感じで、ま、これは仕方ないんでしょうかね。逆にリアは予想を上回る良いサスです。ペダリングでフカフカ動いてしまうことがない割に、路面の段差やうねりに対しては期待以上に動いてくれます。このへんも、i-driveでペダルにかかる反力のバラツキが抑え込まれているものの、サス自体がかなり柔らかくてペダリングに伴うストロークが大きいXCR3000とは対照的といえるでしょう。感覚的には、非常に乗り心地のいいリジッドMTBといった印象です。フロントまわりが軽いのも、そう感じさせる一因なのかもしれません。
 まあ、MTBをオンロードで評価しても始まらないので、シーズンインしたらオフロードでバリバリ乗り倒してやろうと思ってます。

追記 (05/01/24)

 このオベドFSというフレームは古いものなので、最新のものと較べると勝手が違う部分も結構あります。まず気になるのが、想定されているブレーキがカンチレバータイプであること。リアのスイングアームにはそれ用のアウター受けがあったりします。
 そういうフレームにVブレーキを装着すると多少の不具合が出るのは当然の話。例えばリアブレーキ台座のあたりはブレーキレバーを強く握り込むと、いわゆるシートステー相当部のリアサスアームがかなり広がります。Vブレーキの強力な動作力を想定した設計じゃないのですから仕方ないところでしょう。ただこのへんはブレーキブースターの装着でなんとか誤魔化しはききます。
 むしろ困ったのはワイヤーの取り回しでした。Vブレーキはほぼ真横方向からワイヤーで引くため、大きく湾曲したワイヤーリードを介してアウターワイヤーを装着します。ところがそのワイヤーリードが足に当たりやすいのです。通常のペダリングでは大丈夫なのですが、下りでちょっと腰を引くと、膝の裏あたりに当たります。とりあえず実害が無いとはいえ、あまり気分のいいものじゃありません。
 解決法としては、ワイヤーリードをプーリー式のものに変えて曲率を小さくするテもあります。しかしここはもうちょっと根本的な部分で改善したい気もします。そこで思いきってブレーキを交換してみました。
 XTRからのブレーキ交換なんて恐ろしく贅沢な行為ですが、まあ、そこは趣味の自転車いじりということで。で、何にしたのかというと、ケーンクリークのダイレクトカーブというブレーキです。
 じつはコレ、自転車に乗り始めた頃に雑誌の紹介記事で目にして以来、すごく興味を持ち続けていたブレーキなのです。基本的にはリンク機構を持たないシンプルな構造のVブレーキですが、非常に特徴的なのはアームが左右不等長となっていること。そのため真横ではなく斜め方向からワイヤーで引くことになり、ロード用サイドプルブレーキのようにワイヤーリードを使わずに直接アウターワイヤーを装着できるというわけです。
 またダイレクトカーブには2、3、5という3種類のバリエーションがあります。最上級グレードの5はアームがCNC加工の組み立て式なので、組み替えを行なうことでアーム配置をどちら向きにもすることができ、ワイヤリングの自由度が非常に高いのも大きな特徴です。もちろん購入したのはダイレクトカーブ5。またレバーも、このブレーキ用に設計されたダイレクトカーブレバーに交換することにしました。
 気になる重量ですが、ブレーキ&レバーでXTR+クールストップシューの状態から約40g増。さらにワイヤーリードを使わない分アウターが多少長くなるので、トータルで50g増くらいか。まあ、重量最重視で組んでるわけじゃないので、他にメリットがあるならこのくらいは許容範囲。あとは実際の制動性能がどうかってところですね。シマノのパラレルプッシュのフィーリングがあまり好きじゃなかったので、そのへんもちょっと期待したいところです。

フレームライトスピード オベドFS(C-T=440mm)
フロントフォークAMPリサーチF3 XCカーボンレッグ マニトウR7 ロックショックスSID
シートポストトレックTitan(27.2mmφ)
シートクランプ純正非クイック インターロック テールフィン(31.8mmφ)
ステムリッチーWCS(100mm)
ハンドルイーストンEC70
グリップリッチーWCS TRUEGRIPS
バーエンドバーポストモダン・マイクロバー
ヘッドパーツクリスキング1-1/8チタン
ブレーキレバーシマノXTR(BL-M950) ケーンクリーク ダイレクトカーブレバー
ブレーキシマノXTR(BR-M960) ケーンクリーク ダイレクトカーブ5
ブレーキシュークールストップ・デュアルコンパウンド スイスストップ(グレー)
クランクシマノXTR(FC-M960 170mm/44-32-22T)
シフターシマノXTR(SL-M952)
フロントディレイラーシマノXTR(FD-M960 34.9mmφ)
リアディレイラーシマノXTR(RD-M952GS)
カセットスプロケットシマノXTR(CS-M960 11-32T)
チェーンシマノ デュラエース/XTR(CN-7701)
メーターキャットアイCC-CL100
ホイールボントレガー セレクト ボントレガー レースXライト
タイヤWTBナノラプター(26×2.10/26×2.00) IRCシラクXCライト(26×1.95)[Tokyoエンデューロ出走時のみT-Serve 26×1.25] ミシュラン
チューブスペシャライズド
サドルセライタリア フライト パンターニ フィジーク ゴビ セライタリアSLRトランザム
ペダルタイム アタック カーボン/チタン
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